・久しぶりのセックスで、下腹部に痛みを感じて不安になっている
・このまま痛みが治らず、パートナーとセックスできなくなったらどうしよう
・誰かに相談するのは恥ずかしいから、できるだけ自分で解決したい
このような不安や悩みはありませんか?
性交痛は決してめずらしくない身体症状の一つですが、いざ自分自身が経験すると不安になるものです。
性交痛の原因や症状はさまざまあり、少しの工夫で改善されるものもあります。
しかし、なかには婦人科疾患や性感染症が要因となって生じているケースもあるため、むやみに放置するのは危険です。
そこで本記事では、以下の内容を解説します。
- 性交の際に下腹部が痛む原因
- 性交で下腹部が痛む場合は早めに受診した方がよい理由
などを解説します。
性交の際の下腹部痛で悩んでいる方は、参考にしてみてください。
目次
性交の際に下腹部が痛むのは子宮内膜症の可能性あり
性交の際に下腹部が痛むのは、いくつか理由が考えられ、そのなかでも頻度が高いのは「子宮内膜症」といわれています。
・子宮内膜症とは
・子宮内膜症と性交痛の関連性
・子宮内膜症のセルフチェック
・子宮内膜症の治療方法
それぞれ解説します。
子宮内膜症とは
子宮内膜症は、子宮内膜がなんらかの原因で子宮の内側以外の場所で発生・増殖してしまう疾患です。
20〜30代の女性に多く、女性の10人に1人の割合で発症するといわれています。
子宮内膜が発生する場所としては、卵巣や直腸、ダグラス窩などが多いとされていますが、まれに肺や胸膜にも発生する場合があります。
子宮内膜症で最も多い症状は「月経痛」で、約8割の方にみられるのが特徴です。
また、症状が進行すると不妊症の原因にもなりうるため、早期発見と早期治療が重要です。
子宮内膜症と性交痛の関連性
子宮内膜症は、初期では生理時以外はほとんど無症状ですが、子宮内膜の増殖と剥離(はくり)、炎症を繰り返して徐々に痛みが強くなっていきます。
痛みが強くなってくると、生理のときだけではなく日常的に下腹部に痛みが出るようになり、性交にも影響します。
挿入された男性器が直接、子宮内膜の発生部位にあたるわけではありませんが、振動や体位変換の際に痛みが強くなる場合があるため注意が必要です。
子宮内膜症のセルフチェック
性交の際に感じる下腹部の痛みが、子宮内膜症が原因となっているかどうかセルフチェックしてみましょう。
子宮内膜症セルフチェック表
- 1.月経痛がある
- 2.下腹部に痛みや違和感がある
- 3.腰が痛い
- 4.セックスの際に痛みがある
- 5.1年以上妊活をしているが、妊娠しない
- 6.肛門痛がある
- 7.排便時に痛みがある
- 8.気分不良や嘔吐症状がある
- 9.不正出血がある
- 10.下痢をすることがある
- 11.頭痛がある
- 12.便秘傾向にある
- 13.おしっこが近い
- 14.微熱がある
- 15.背中が痛むことがある
上記のうち、1〜5にあてはまる項目が多い場合には子宮内膜症が疑われます。
あてはまらない場合は、ほかの婦人科疾患の影響により痛みが生じている可能性があるため、早めに婦人科を受診するようにしましょう。
子宮内膜症の治療は主に2種類
子宮内膜症の治療は、手術療法と薬物療法が代表的です。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、以下の点を考慮して選択されます。
・年齢
・症状の度合い
・進行度
・妊娠の希望有無 など
また、痛みの軽減や病巣を除去する必要性の有無によっても治療方法が異なります。
手術療法と薬物療法について、それぞれ解説します。
手術療法
手術療法は、骨盤の深いところに子宮内膜が発症した場合に有効な治療方法です。
手術療法のなかでも、傷が小さく痛みも少なくてすむ腹腔鏡手術が推奨されています。
ただし、腹腔鏡手術は豊富な知識と経験が必要であるため、実績のある医師に相談するようにしましょう。
妊娠を希望する場合は、卵巣や卵管を元の状態に戻す必要がありますが、妊娠を望まない場合や痛みが強い場合には子宮を取り除くケースもあります。
薬物療法
薬物療法には、痛みを和らげるための治療と、子宮内膜症の進行を止めるホルモン療法があります。
痛みを和らげるための解熱鎮痛剤は、生理痛の緩和に対しては一定の効果がありますが、症状の進行をとめる効果はありません。
症状が進行している場合は、ホルモン療法を選択するようにしましょう。
ホルモン療法には、卵巣ホルモンを閉経状態にする効果や、ピルを使用して妊娠状態にする方法があります。
いずれにしても、どの治療法を選ぶかは自分自身の症状や体質を考慮し、医師と相談した上で選択するのがよいでしょう。
性交の際に下腹部が痛むそのほかの原因3つ
性交の際に下腹部が痛むのは、子宮内膜症のほかにも以下の3つの原因が考えられます。
・子宮筋腫
・卵巣腫瘍
・クラミジア感染症
それぞれ解説します。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮に腫瘍ができる疾患で、30歳以上の女性に多くみられるのが特徴です。
がん(悪性腫瘍)ではありませんが、月経痛をはじめとして不正出血や腰痛を伴います。
また、子宮筋腫を発症したからといって、必ずしも性交痛が引き起こされるわけではありませんが、症状が進行すると下腹部に痛みを生じる可能性があります。
子宮筋腫の症状は以下のとおりです。
・月経痛
・不正出血
・貧血
・腰痛
・性交痛
・不妊
・頻尿
・便秘
子宮筋腫は基本的に良性の腫瘍ですが、閉経後に大きくなる場合は、がん(悪性腫瘍)の可能性も否定できません。
気になる場合は早めに婦人科を受診し、詳しい検査を受けるようにしましょう。
卵巣腫瘍
卵巣腫瘍は、卵巣に腫瘍ができる疾患です。
症状はほとんどなく、日常生活に支障をきたすことはほとんどありませんが、腫瘍が大きくなり、ねじれたり損傷した場合には下腹部に激しい痛みが生じる場合があります。
症状が進行した状態に気が付かずに性交をした場合、下腹部に痛みを伴うため注意が必要です。
卵巣腫瘍は、子宮筋腫と異なり、悪性腫瘍の可能性があります。そのため、下腹部に痛みがあると感じた時点で、内診や超音波検査などの詳しい検査を受けるようにしましょう。
クラミジア感染症
クラミジア性感染症は、性感染症のなかで最も多い感染症で、膣や尿道・のどに症状を伴いやすい疾患です。
多くの場合で自覚症状はありませんが、進行すると以下の症状が出現する場合があります。
・おりものの増加
・不正出血
・下腹部痛
・性交痛
上記のような症状があるにもかかわらず放置すると、子宮内膜炎や卵巣炎・骨盤膜炎と広範囲に広がり、骨盤内炎症生疾患に発展するおそれもあります。
性交の際に下腹部が痛む場合、早めの受診が必要
性交の際に下腹部が痛む場合、がまんせずに早めに婦人科などの専門の医療機関を受診する必要があります。
その理由は、以下のとおりです。
・婦人科疾患や性感染症が悪化するおそれがある
・治療費が高額になる可能性がある
・パートナーとの関係性が悪化するおそれがある
それぞれ解説します。
婦人科疾患や性感染症が悪化するおそれがある
すでに解説したように、性交の際に下腹部が痛む原因は、婦人科疾患や性感染症の可能性があります。
発症初期は症状が軽い、もしくは自覚症状がない場合がありますが、進行すると生命にかかわりかねません。
たとえば、痛みの原因が子宮筋腫や卵巣腫瘍であった場合、できた腫瘍が良性か悪性かで予後が大きく異なります。
さらに感染症を放置しておくと、骨盤内炎症を引き起こし慢性骨盤痛や不妊のリスクが高まります。
性交の際に下腹部に痛みを感じたら、がまんせずに早めに婦人科を受診するようにしましょう。
治療費が高額になる可能性がある
下腹部の痛みを放置しておくと、治療費が高額になる可能性があることも把握しておく必要があります。
痛みの原因疾患が発症して間もない段階であれば、薬物治療で、しかも数回の通院で完治する可能性があります。
しかし、症状が進行し薬物療法では治療できない場合には、手術や入院は避けられません。
手術や入院となると、治療費が高額になるため、早期発見・治療が望ましいといえるでしょう。
パートナーとの関係性が悪化するおそれがある
性交の際に痛みがあると、どうしても性交に対して前向きになれず、パートナーの気持ちに応えられない場面がでてくるでしょう。
その状態が長く続いてしまうと、パートナーが「自分は拒否されている」と勘違いし、関係性が悪化するおそれがあります。
パートナーに打ち明け、理解を求めるのも必要ですが、下腹部が痛む根本の原因を解決しない限り、繰り返してしまう問題かもしれません。
まとめ
性交の際に下腹部が痛む原因は、子宮内膜症という婦人科疾患の可能性が高く、約8割の方に月経痛がみられます。
症状が進行すると、下腹部に痛みが出るようになり、性交にも影響します。
子宮内膜症が気になる方は、セルフチェック表を用いてチェックをおこなってみましょう。
あてはまる項目が多い場合は子宮内膜症が疑われるため、早めに婦人科を受診し、詳しい検査を受けるようにしましょう。
そのほかにも、子宮筋腫や卵巣腫瘍、クラミジア感染症といった疾患も性交時の下腹部痛に影響します。
いずれにしても、放置すると症状が悪化したり治療費が高くなったりとデメリットが大きいため、早めの受診がオススメです。
当院でも、性交痛に関するカウンセリングをおこなっております。
初めての方でも落ち着いて利用していただくために、完全個室でプライバシーに徹底配慮して診療をおこなっていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
満行 みどり
略歴
国立佐賀医科大学(現佐賀大学)医学部卒業。その後九州大学医学部付属病院第二外科、佐賀県立病院などで外科、救命救急、麻酔科全般を習得。
聖心美容外科東京院、大阪院、福岡院にて勤務後、横浜院院長、全国診療医長を歴任。
婦人科形成、脂肪吸引を始めとする多くの症例に携わる。
レーザーによる女性器の若返り治療、膣の引き締め、外陰部形成のライセンスをアメリカのビバリーヒルズにて日本人の女医として初めて習得。東京の広尾に、日本人初となる女医による女性器形成専門クリニック、みどり美容クリニック・広尾を開院する。また「女性器形成」「女性性機能障害」のスペシャリストとして、様々な論文執筆、講演会、ドクターへの指導を行う。
資格
所属学会