老若男女問わず、切実でありながら他人に相談しにくい悩みの一つである「性行為(セックス)」。

特に女性は痛みや苦痛を感じてもパートナーに言いにくく、一人で悩むことも多いです。

しかし、セックスは本来痛さを我慢してするものではなく、男女ともに痛みなく愛情を持って幸せな気持ちでするものです。

そこで本記事では、治療法・対処法を中心に性交痛について詳しく解説していきます。

性交痛とは?

性交痛とは、「痛くて入らない」「入っても痛い」など性行為(セックス)をする際に感じる痛みのことです。

10代~60代と幅広い年代の多くの方が性交痛で悩んでいます。 挿入する時に膣の入り口が痛い場合や膣の奥が痛い場合、痛みの具合も軽いものから激痛まで痛くなる場所や痛みの具合は人によって様々です。

性交痛の原因

ここでは、性交痛の原因について解説します。

痛みを感じる主な部分には、外陰部や陰唇などの膣の入り口付近と膣の奥の2か所があり、それぞれ「入口部性交痛」、「深部性交痛」と呼ばれており、それぞれ痛みの原因があります。

入り口付近の痛み(入口部性交痛)

挿入する時に膣の入り口のあたりが痛む・膣の中がヒリヒリと痛いというタイプの性交痛の原因としては、以下に示すようなものが考えられます。

挿入時だけでなく、男性が挿入してからピストン運動をしている時に膣内に痛みを感じるというケースもあります。

・潤い不足

性交痛で多いのが、十分に濡れていない状態で挿入されることで感じる痛みです。

入り口は濡れているようでも膣の中は濡れていなかった、なんてこともあります。

前戯が十分ではない、体質的に濡れにくい、挿入してから長い時間ピストン運動が続いたことで膣が乾く、などの理由でうるおいが不足し膣が乾燥した状態で挿入したり動かしたりすると、擦れて痛みを感じたり膣内が傷ついてしまったりする場合があります。

また、濡れない事をパートナーに言いづらく一人で悩む女性が多いですが、女性側だけの問題ではないことも多いので、気にし過ぎは禁物です。

・セックスの仕方やサイズの問題 体位により角度が悪かったり、セックスが激しすぎたりする場合も、痛みを感じることがあります。

また、膣が狭い・男性のペニスが大きいなどサイズが合っていない場合も痛みを感じてしまいます。

・膣の委縮・硬化 加齢により女性ホルモンが減ったり前回のセックスから期間があいたりした場合には、膣の筋肉が衰え硬くなることにより痛みを感じやすくなります。

加齢による女性ホルモン減少は、他にも膣粘膜が薄くなり傷つきやすくなる、膣分泌物が減少する、などの影響を与えます。

・処女膜強靭症 通常、処女膜は初めてのセックスで破れますが、生まれつき処女膜が厚くて固い「処女膜強靭症」という体質を持っている女性もいます。

このような方はセックスをしても簡単に処女膜を破ることができず、セックスの度に痛みを感じてしまうことがあります。

・膣内の炎症や怪我 性感染症やコンドームの材質によるアレルギー反応、怪我などが原因で、膣内や外陰部が炎症を起こし痛みを感じることがあります。

炎症が続くと膣粘膜が萎縮し、痛みが続いてしまうことがあります。

そのため、炎症は早めに医師に診てもらい治すようにしましょう。

・不安や恐怖、ストレスなどの精神的要因 精神的な要因が痛みの原因になる場合もあります。

セックスに対する不安や緊張、トラウマなどの恐怖、ストレスなどがあると、それが原因となって痛みを引き起こしてしまうことがあります。

パートナーに不安や不満など話し、セックスを楽しめるよう環境作りをしていくのが大切です。

膣の奥の痛み(深部性交痛)

膣は濡れていて挿入は問題ないけれど奥が痛い場合には、次のような原因が考えられます。

・体位やセックスの仕方の問題 後背位などでは奥まで突くことができますが、その分痛みを感じる女性も多いです。

特に、男女間の身長差があったりピストン運動が激しすぎたりする場合は痛みを感じやすいです。

また、体が妊娠の準備をする生理前は子宮口が降りてきているため、奥まで突かれると子宮口に当たって痛くなりやすい場合があります。

女性の感じ方に合わせてピストン運動をするスピードや位置を調整してもらって、お互いに気持ちの良いポイントを見つけましょう。

・婦人科系の病気 膣の奥で痛みを感じる場合は、子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮内膜症、クラミジア感染症などの婦人科系の病気が関係している可能性があります。

放っておくと、悪化して不妊症に繋がったり大掛かりな治療が必要となったりする場合があるため要注意です。

早めにクリニックで診察を受けて性交痛の原因を正確に把握し、それに合わせた治療を受けるようにしましょう。

その他の原因

他にも、性交痛を起こす原因には下記のように様々なものがあります。

  • 婦人科系疾患(バルトリン腺のう胞、カンジダ性膣炎など)
  • 泌尿器科系疾患(神経因性膀胱、膀胱炎、尿道炎など)
  • 内臓系疾患(腸炎、憩室炎など)
  • 運動器系疾患(腰椎椎間板ヘルニア、変形性股関節症など)
  • 膣炎
  • 皮膚科系疾患(外陰炎、性器ヘルペス、感染症など)
  • ペインクリニック系疾患(坐骨神経痛、神経因性疼痛など)

複数の要因が絡み合うこともあります。

膣の委縮・硬化による性交痛

性交痛の原因の一つである膣の委縮・硬化。 これは、加齢による女性ホルモン減少や長い期間膣を動かしていないことで起きます。 ここでは、それぞれの場合についてもう少し詳しく解説します。

更年期と性交痛の関係

40代後半から50代半ばくらいにかけて女性が更年期を迎えると、女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少します。

エストロゲンの減少は性交痛に繋がることが多く、更年期の時期は性交痛が辛くてセックスレスになる女性が多いと言われます。

卵巣から分泌される女性ホルモン「エストロゲン」には、膣に弾力や潤いを与えてくれる働きがあります。

ところが、加齢によりエストロゲンの分泌量が減ってしまうと、膣粘膜からの分泌物や膣のコラーゲンも減少してしまいます。それにより、膣粘膜は薄くなり膣が乾燥し萎縮して硬く縮んでしまう『膣萎縮』の状態になります。

そのような状態でセックスをすると痛みや出血が生じてしまいます。

悲しいお話ですが、この更年期の膣委縮は女性なら歳をとると誰もが避けられないことです。

久しぶりのセックスによる性交痛

膣が委縮し硬くなってしまい性交痛を感じることは、更年期の方だけでなく若い方でもありえることです。

長期間セックスをせず膣を動かしていないと、膣の筋肉が萎縮して硬くなってしまう場合があります。そのため、久しぶりのセックスの際に硬くなっている膣の中をむりやり広げられると、痛みを感じてしまうことが多いです。

このように、セックスの経験はあるけれど最後にセックスをしてから長い期間が経っている女性のことを、日本ではセカンドバージン(セカンド処女)と呼ぶこともあります。

また、久しぶりのセックスだと緊張して潤いが不足し、さらに痛みやすくなる、といったパターンもあります。

とはいえ、膣は伸縮性の高い器官なので、使っていれば自然とまた柔軟な状態に戻ります。

また、セックスを控える臨月から産後しばらくを過ぎてからの時は、間があいていることに加えて膣や子宮の回復ができていないことから痛みを感じる場合があります。

性交痛の治療法・対処法

ここからは、性交痛の治療法・対処法について紹介します。

性交痛の症状や痛みを感じる場所は人それぞれです。

性交痛は痛みの場所や原因によって治療法が違いますので、どの場所がどの程度痛いのか把握しておくことが大切です。

性交痛を治すには、クリニックにて根本的に治療する方法と、自宅で痛みを和らげることができる方法とがあります。

クリニックでの根本的治療

・インティマレーザー/Vタイトニング インティマレーザー/Vタイトニングでは、レーザーを膣内に照射することで膣の細胞を活性化して弾力性を向上させます。

これにより、膣が乾燥しにくくなり潤いアップ・性交痛が改善する、膣内環境が良くなり女性器まわりのにおいやおりものが改善する、などの効果があります。

インティマレーザーは膣粘膜の深い層にまでエネルギーが届き、小陰唇や膣の入り口~奥までの広い範囲を施術することが可能です。

施術自体は約15分で終わり、麻酔クリームを使用するため施術中も痛みを感じることはほぼありません。

・手術 性行為の際に痛くて入らない時は、処女膜が厚くて硬い処女膜強靭症の可能性があります。

そのような場合は「処女膜切開術」で厚くて硬い処女膜を切開し、膣の入り口を少し広げることで性交痛を改善させることができます。

この手術では静脈麻酔と局所麻酔を使用するため、全く痛みを感じることなく治療をうけていただくことが可能です。また、手術自体は約15で完了します。

手術後は吸収糸と呼ばれる溶ける糸で縫合するため、基本的に抜糸の必要はありません。

・細胞成長因子(GF) 細胞成長因子(GFグロースファクター)は、細胞の新陳代謝を活発にし、新しい細胞をどんどん作り出してくれるものです。

お顔の美容でもよく使われています。

膣は粘膜ですので皮膚に比べると吸収率が高く、効果が出やすいです。

・ホルモン補充 加齢により女性ホルモンが少なくなったことが原因と考えられる場合には、その女性ホルモンを補ってあげるという方法もあります。

内服やシールタイプのもの、膣座薬などがあり、クリニックなどで相談すれば今の症状に合ったものを処方してもらえます。

ただし、女性ホルモンは乳がんや子宮体がんに影響する要素でもあるため、リスク予防のため定期的にがん検診に行くことが必要です。

自宅でできる対処法

・潤滑ゼリーを使う リューブゼリーなどの潤滑ゼリーを使えば、ヌルヌルの液体により痛みの原因となる挿入時の摩擦を少なくすることができます。

ただし、ずっと使い続けるのが億劫な方は根本的な治療をすることをおすすめします。

・定期的に性行為や膣トレをする 性行為の間隔が長く空き過ぎると膣が萎縮し、柔軟性を失ったり潤いが減ったりする原因のひとつになりますが、膣は伸縮性の高い器官なので使っていれば自然とまた柔軟な状態に戻ります。

そのため、定期的に性行為や膣トレをすることが大事です。 パートナーとの性行為が難しい場合でも、自身の手指や膣トレグッズで硬くなった膣をほぐし本番に向けた事前準備をしておくことで、性行為をする時の痛みを和らげることができます。

・男性に久しぶりのセックスなことを伝える 男性は相手の女性が久しぶりのセックスであることが分かれば、痛くないように配慮してくれますよ。

また、どうしても痛い時は「痛い」と伝えましょう。そもそもセックスは怖さや痛さを我慢してするものではなく、女性も男性も幸せな気持ちでするものです。

性交痛の改善には女性だけではなく、男性側の理解や配慮も必要です。

・睡眠と食生活を整える 加齢によるホルモン減少で膣が萎縮している場合は、日常生活の改善をすることで症状が良くなることもあります。

栄養バランスのとれた食事と良質の睡眠で免疫力を高め、自律神経を整えるようにしましょう。

女性ホルモンと似たような働きをしてくれる大豆イソフラボンや、乾燥を防ぎ膣内の水分を高めてくれる効果があると言われているビタミンDなどを摂取してみると良いでしょう。

大豆イソフラボンが含まれる食材:豆腐・湯葉・納豆・きな粉・味噌・豆乳 ビタミンDが含まれる食材:イワシ・カレイ・シラス・サケ・干し椎茸・きくらげ

よくある質問

最後に、性交痛や久しぶりのセックスに関する気になる疑問点についてお答えします。

最後の性行為から長い期間があくと、膣の幅は狭くなりますか?

長期間膣を動かさないと、膣口が萎縮し硬くなってしまいます。その広がりにくさから「膣の幅が狭くなる」と感じる方が多いです。

しかし、膣は元々伸縮性のある器官で、「通常時の幅が狭くなる」ということはありません。

広がりにくくなっているだけなので、定期的に膣を動かすようになるとまた柔軟な状態に戻ります。

最後の性行為から長い期間があくと、感じにくくなりますか?

一度は性感帯が開発された方であっても、性感帯を長く使わないと、敏感だった神経は再び鈍くなってしまいます。そのため、最後の性行為から長い期間があいていると「感じにくくなった」と思う場合があります。

しかし、性感帯を磨く方法はセックスだけではありません。感度が鈍くなることが不安なのであれば、定期的に一人エッチをすることで敏感な体を保つことができる可能性があります。

濡れにくく乾きやすい体質のため、セックスのときに潤滑剤を毎回使っています。パートナーとの相性が悪いのか、自分自身の問題なのかが分かりません。

年齢に関係なく、ホルモンバランスの乱れにより膣内のコラーゲンが低下したり膣内の善玉菌の量が減少したりするケースもあります。

膣のうるおい不足には原因があることが多いので、一度受診することをおすすめします。

まとめ いかがでしたでしょうか。 本記事では、治療法・対処法を中心に性交痛について詳しく解説しました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。 本記事では、治療法・対処法を中心に性交痛について詳しく解説しました。

性交痛はとてもデリケートなお悩みであり、特に女性は痛みを感じていてもなかなかパートナーに言えず、1人で抱えてしまう方が多いです。

しかし、我慢を続けてしまうと性交渉が億劫になったり恐怖心を抱いたりする可能性がある上、そもそもセックスは怖さや痛さを我慢してするものではなく、女性も男性も幸せな気持ちでするものです。

「痛くて入らない」「久しぶりにセックスをしたいが不安だ」など痛みを感じるときや不安・悩みがある時は、決して我慢せず早めに医師に相談しましょう。

いつまでもパートナーと愛のあるコミュニケーションを育み続けることができるといいですね。