更年期障害によるホルモンバランスの変化は、女性の身体にさまざまな症状を引き起こします。その一つに、性交痛が挙げられます。

ヒリヒリとした性交時の痛みは、パートナーとの関係や充実した性生活に影響を及ぼすことがあるでしょう。こうした悩みに対して、漢方薬は新たな改善策として注目されています。

漢方は、症状に合わせて体のバランスを整え、痛みの緩和や根本的な改善に期待できます。本記事では、性交痛の改善におすすめの漢方の種類や期待できる効果について詳しくご紹介します。

更年期障害による性交痛とは?

更年期障害による性交痛は、更年期に伴うホルモンバランスの変化によって引き起こされる症状の一つです。更年期は40代から60代にかけて起こり、閉経の前後10年程度の期間を指します。

更年期に入ると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することで、膣の粘膜が弱まり、潤滑性が低下します。その結果、性交時にヒリヒリとした痛みや出血を経験している女性も多いです。

これらの症状は、満足できる性生活やパートナーとの良好な関係にも影響を与える可能性があります。また性交痛が繰り返されると、その感覚がトラウマとなり、今後の性行為に対する不安や緊張を引き起こすことも考えられます。そのため、早期のケアが今後の影響を軽減し、健全な性生活を維持する鍵となるでしょう。

性交痛の原因と症状

性交痛の原因と症状
更年期による、性交痛の原因は主に以下の3つになります。

・膣機能の低下による乾燥
・女性ホルモンの分泌の低下
・ストレスや緊張による潤い不足

それぞれ症状と合わせて解説します。

膣機能の低下による乾燥

更年期に伴うエストロゲンの減少は、膣の機能低下や乾燥を引き起こします。膣壁と膣内膜が薄くなり、柔軟性が低下するため、潤い不足に陥りやすくなるでしょう。その結果、膣内にかゆみやヒリヒリとした炎症を伴うケースもあります。

性交時に痛みや不快感を感じることもあり、強いストレスを受けることもあります。膣乾燥への対処には、症状の理解と適切なケアや治療が重要です。

女性ホルモンの分泌の低下

女性ホルモンは、細菌から守る働きをしています。しかし閉経後は女性ホルモンの分泌が低下するため、膣の粘膜が乾燥し、薄くなって萎縮が起こります。

これが「萎縮性膣炎」と呼ばれる状態です。膣の粘膜が炎症を起こしやすくなるため、性交時に膣が傷つきやすく、痛みや出血を伴います。また、閉経後には外陰部のヒリヒリとした痛みや排尿時のしみる感じ、黄色や褐色のおりものなどの症状も見られることがあります。

ストレスや緊張による潤い不足

ストレスや極度の緊張は、性交痛の原因となることがあります。自律神経が乱れると血液循環が悪化し、膣の潤いや膣の拡張が妨げられるためです。

また、ストレスが溜まると、リラックスした状態で性行為を行うことが難しくなり、分泌液の低下にも繋がります。ストレスや緊張による性交痛は、パートナーとの関係値をより深め、生活習慣も整えることが大切です。適度な運動やな睡眠、バランスの取れた食事などでストレスを解消することが有効です。

性交痛は漢方で改善できる?

性交痛は漢方で改善できる?
漢方療法は、自然由来の生薬を組み合わせて作られる伝統的な治療法で、更年期による性交痛の改善にも効果が期待されています。中国から伝わり、日本で発展した漢方は、複数の生薬を組み合わせて調合することで、さまざまな症状を同時に改善できるという特徴があります。

例えば、更年期障害によるホルモンバランスの乱れや膣の乾燥、炎症などの症状を総合的に改善することが可能です。漢方薬は身体全体の調子を整えながら、症状の根本的な原因を解決することを目指しています。

しかし、個人の体質によっては効果が現れるまでに時間がかかる場合や、効果を感じにくい方もおられますので、注意が必要です。他にも、持病や他の薬との相互作用の可能性などにより、療法を受けられない方には、漢方薬の服用が適していると言えます。

漢方療法は副作用が比較的少なく、長期的な症状の改善にも効果的です。症状の内容や体質によって、最適な治療方法は異なるため、信頼できるクリニックで相談して治療法を選択することが重要です。

更年期障害から起こる性交痛に対しての対処法

更年期障害から起こる性交痛に対しての対処法
更年期障害による性交痛の痛みには、下記の3つの対処法が有効です。

・漢方薬を服用する
・ホルモン補充療法による治療
・婦人科形成クリニックに相談

それぞれ詳しく解説していきます。

漢方薬を服用する

更年期による性交痛の改善には、副作用が少ない漢方薬の服用がおすすめです。漢方薬は体質を改善して根本的な解決を目指す対処法であり、同じ症状が繰り返されるのを防ぎます。

毎日バランスの取れた食事や運動を続けるのが難しい方でも、症状や体質に合った漢方薬を毎日飲むことで、手軽に続けることができるでしょう。漢方薬は体のバランスを整える効果があるため、性交痛の改善に期待できます。

ホルモン補充療法による治療

ホルモン補充療法(HRT)は、更年期障害によるエストロゲンの減少を補う治療法で、性交痛の改善に効果があります。HRTでは、エストロゲンを補充し、女性ホルモンを安定させることが可能です。この療法は更年期障害による根本的な治療法として、期待されています。

また、HRTは性交痛だけでなく、動悸などの血管運動系や自律神経系の症状、閉経後の骨粗しょう症の予防と改善などにも効果を発揮します。経口剤、貼り薬、塗り薬の3タイプがあり、症状や体質に合わせて最適な方法を選択することが可能です。

婦人科形成クリニックに相談

更年期による性交痛は、婦人科形成クリニックでの治療で改善できます。特にレーザー治療が有効で、膣の組織再生を促し、弾力を取り戻します。症状によっては2、3回のレーザー照射が必要ですが、1回でも効果を感じられる場合があります。

この治療法は更年期障害の多くの症状に効果的で、臨床研究でもその有効性が証明されています。性交痛だけでなく、通常時の違和感や灼熱感の改善にも役立ちます。また、治療直後から多くの方が膣内の改善効果を実感しており、即効性のある治療法としておすすめです。

更年期障害におすすめの漢方3選

更年期障害におすすめの漢方3選更年期障害におすすめの漢方薬は、以下の3つになります。

・加味逍遙散
・六味丸
・八味地黄丸

それぞれの期待できる効果や特徴について詳しく解説します。

加味逍遙散

加味逍遙散は、更年期障害の症状に幅広い効果を発揮する漢方薬のひとつです。ほてりやイライラ、不安感、異常月経、不眠などの症状に効果が期待でき、更年期障害による性交痛の緩和にも役立ちます。比較的幅広い体質の人に適していますが、胃が弱い人や虚弱体質の人は注意が必要です。

六味丸

六味丸は、更年期障害に伴う様々な症状の改善に効果的な漢方薬です。疲れやすい方や、むくみや頻尿の症状がある方に向いています。腎機能を高め、体内の水分バランスを整えることで、肌の乾燥やむくみ、かゆみを緩和します。更年期障害によりホルモンバランスが乱れることで起こりやすい症状、特に体力の衰えや冷え症にも効果が期待できます。腎機能を強化することで、更年期障害の症状を和らげ、性交痛にもおすすめです。

八味地黄丸

八味地黄丸は、腎を元気にすることで、体を温め基礎代謝を活発にし、冷えや血行不良を改善します。疲れやすい方や、冷え、腰痛、頻尿などの症状がある方に向いています。八味地黄丸は体を温め、気血水を増やし、巡らせる効果があります。これにより、更年期障害に伴う様々な不調や性交痛を緩和することが期待できるでしょう。

まとめ

更年期障害による性交痛は、女性の身体にさまざまな不調をもたらします。そして性交痛は、パートナーとの関係や充実した性生活に影響を与えるため、痛みに悩む女性にとっては大きな問題です。

今回紹介した漢方薬は、このような症状の改善に役立つ可能性があります。漢方薬を試しても効果が得られない場合や、早期に治療を希望する方は、痛みの原因を正確に把握するため、当院の婦人科形成クリニックへのご相談をおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、最適な治療法を見つけることができるでしょう。